「素直になれなくて」という書き出しで始めようと思ったけれど、そういえばなんかこんなタイトルTVドラマとかあったような……なんて、気になるからググってみると、ドラマのタイトルと一緒にChicagoの曲もヒットしてきた。youtubeで観てみると「Hard to say I’m sorry」という名曲じゃないの。知ってるけど邦題を1ミリも知らなかっただけだった。ドラマの方も1ミリも内容を思い出せないけど……空耳アワーのネタはずっと覚えていたけどね。
それはそうと、素直になれなくて困った事態に陥ったことがある。
昔、北アルプスにから午前中に下山してきて、上高地でキャンプしていた時のことだ。上高地といえば北アルプスの玄関。バスターミナル、ホテル、キャンプ場などがある北アルプスの玄関口だ。あの頃は熊も出てこなかったので、手軽にキャンプをすることができた。
とりあえずテントを張り、ザックを置いて、温泉にでも入ってゆっくりしようということになって、昼過ぎからダラダラと遊んでいたわけだけど、そろそろ日も暮れてきたからテントに戻ってご飯でも食べようかという段になって、財布やらクルマのカギやら、つまりボクの全財産が入っていたウエストポーチを落としたことに気づいたのだ。
もうね、完全にパニックですよ。
こうなったら、ぼくは自分の歩いたところを歩き返す、同行者はバスターミナルの交番に届いていないか確認してもらうことにして、それぞれ僕のポーチを捜索することにした。もう日は暮れかかっていたがしょうがない。なにしろ見つからないと帰れないのだから。
色々探し回ったあと、最後にポーチをもっていた記憶がある温泉に行き、従業員さんに芳しくない返事を聞いた頃には辺りは暗くなっていた。見つからなかったけどタイムアップだ。一旦バスターミナルに戻り合流しようと思い温泉を出る時に、温泉の職員さんからご好意でこういう申し出をいただいた。
「ライト、お貸ししましょうか?」
僕はバスターミナルまで行くだけなので大丈夫だと言って遠慮したのだが、コレが間違いだった。温泉から出て10分ほど歩いたところをで、ほんとうに真っ暗になってしまったのだ。街の明るさに慣れきった僕は、完全に山の暗さを舐めていた。この時、一旦引き返してライトを借りればよかったのだが、一回断った手前、躊躇してしまったのだ。
そういうわけで困りきった僕は、この状況をどうにかしようとして、暗闇の中でアレコレ考えていたのだけれど、こういう時って本当につまんないことしか思い出さないんですよ。で、出てきた記憶が「しゃがんでみる」ことだった。多分、子供の頃に読んだ学習漫画かなんかで、忍者は暗闇の中で走ることができるのはなぜ?的な記憶からだっだと思う。この場面で役に立つのかどうかすらわからないけれど、思い出したのだからダメもとでいいからやってみるかと思い、しゃがんで地面に顔を近づけてみた。
道が見える!
多分、現象としては、暗闇といっても光はあるし、地面も僅かな光を反射しているだろうから、しゃがむと見えやすいということなんだと思う。こちらとしてはバスターミナルへの道さえ見えれば理屈はどうでもいいので、ちょっと歩いてしゃがみ、ちょっと歩いてしゃがみという具合に歩を進め、何とかバスターミナルまで辿り着くことができたのだ。
その後、親切な誰かがウエストポーチを拾い上げ、バスターミナルの交番に届けておいてくれたおかげで無事に帰宅することができたのだが、あの時の僕は、暗闇を舐めきっていて、その上、親切な申し出を断り、間違いに気づいた後も修正もしなかった。そんなダメな僕を僕を救ってくれたのは、子供の頃のジャンクな記憶だった。
なぜあのときに思い出したのかもわからない。多分困った事態に陥った僕の頭が、使えそうな記憶を引っ張り出してきて、たまたま当たりを引けただけだと思う。役に立つかどうかなんて、その時にならないと分からないもので、とりあえず適当に何でも頭に入れておけば、死ぬまでに一回ぐらいは役に立つこともあるんだなと思っただけだ。
ただ今から考えると、素直にホテルの人が申し出てくれたときに、素直にライトをお借りしておけば、こんな不確かな記憶に頼る必要もなかったわけで、困りきってジャンク記憶に頼る前に、他人の好意を頼っておくほうがマシだったなぁ……という話。







