持ち家 ≠ 必需品

2010年8月15日

この国で暮らしていくには「定住する居場所(住所)」は非常に大事です。住所を失うという事は、行政サービスを失う事だからです。 ネットカフェで寝る場所は確保出来ますが、住所不定では就職する事もままなりません。住所を失う事は、生き方をかなり制限されてしまう危険な事態です。

ですが「住む場所」は必要でも「持ち家」は必ずしも必要ではありません。

分譲マンションや建売住宅、注文住宅のような「居場所」は非常に高くつきます。よほどのお金持ちではない限り、長期ローンを組まないと手に入りません。 家を買うことになったら金融機関は当たり前のように返済期間が数十年に及ぶ金融商品を勧めてきますが、これは個人が生きていく上ではかなり負担を強いる商品です。むしろかなり特異な商品と考えたほうがいいです。

ちなみに30年前を思い出せますか?

1980年。 僕はまだ小学生になったばかりで、世界は自分の廻りだけで完結してました。

新幹線はまだ東京~博多間しか開通していませんでしたし、走っているのは「ひかり号」と「こだま号」だけでした。電電公社がまだ存在していましたし、JALは半官半民で経営されていました。任天堂はまだファミコンではなくゲーム&ウオッチの販売を開始したばかり。初代ナメ猫ブームとかルービックキューブが流行っていたその年に、家を30年ローンで買った人達が、今年支払いを終えます。

ローンを組んだ時に「バブル経済」とか「失われた10年」とかの経済的な浮き沈みがくる事を予想した人はいないでしょう。経済学者がいくら仮説を立てて未来を予想しても、その通りになる事なんてありませんし、どう考えても未来は予測出来ないのです。

未来を予測出来ないのに、なぜ長期ローンを組めたのか?

これはもう「時代の空気」ですよね。「結婚していい歳になったら家を買う」という空気。「日本経済はこの先も右肩上がりの成長をするであろう」という空気。「今の給料は少ないけど、このまま会社にいればいずれ高収入が約束されている」という空気。「会社が潰れることはない」という空気。

昔から「相場で失敗した」とか「会社が倒産した」なんて事はあったはずなのに、「そういうことは自分自身には降り掛かってこない」という根拠の無い自信が世間に満ち満ちていた訳です。だから長期ローンを組めたし、金融機関もお勧めしていたのです。

今は違います。僕は就職氷河期の人間ですから、知り合い正社員の道から外れて生きている人達がたくさんいます。そんな人達には「家を買う」なんて選択肢はほとんどありません。なぜならローンが組めないから。 でもこの世の中に、長期ローンを組まないと手に入らない生活必需品なんてあるんでしょうか?そういう商品があったとして、それを生活必需品と呼んでいいのでしょうか?

僕は違うと思うんですよね。

電気代<入院費用

2010年8月3日

今年の夏も暑いですね。

エコとか、景気の低迷とか、デフレの影響とかのおかげで、最近はエアコンの使用を控えたり、設定温度を高めにしてサーキュレーターを併用したりするようになってきています。では実際にエアコンの電気代ってどの程度かかるかご存知ですか?

エアコンのマニュアルには消費電力が記載されていますから、それをもとに大体の電気代が計算できます。例えば、冷房の消費電力が1000Wであったとします(これは14畳程度用の冷房能力をもつエアコンの消費電力になります)。これを一日のうち18時間ほど使用したとしましょう。 これより一日の消費電力は

1000W×0.001×18h=18kWh

これに電気料金をかけます。地域によっても契約によっても違いますが、大体25円/kWhぐらいでしょうか。これにより1日あたりのエアコンによる電気代は

18kWh×25円/kWh=450円

となります。1ヶ月なら450円×30日で13,500円位です。

通常は設定温度付近になるよう、エアコンが自動的に断続運転しますから、もう少し安い金額になると思います。が、それでも通年使用する電化製品の電気代以外に、夏の間、1ヶ月につき13,500円も電気代が余分にかかるとなると、家計的にもかなりの負担と思われます。

ところで、入院費用ってどのくらいかご存知でしょうか?

病状や怪我の程度によって変わりますから正確にいくらとはいえませんが、平均して15,000円/日ぐらいだそうです。保険のCMでは「入院給付金で5,000円。より手厚い保障をお求めなら10,000円/日」なんて宣伝していますし、治療費もかかることを考えると、1日あたり約15,000円程度の金額がかかると考えても良さそうです。

今年は既に100人以上の方が熱中症で亡くなっていますが、屋内で、それも自宅で熱中症になる方の中には、エアコンが設置されているにも関わらず、利用しないで熱中症になってしまう方もいるようです。病院に搬送された方の約半数が65歳以上の高齢者なので、体力が衰えてきた年齢にもかかわらず、がんばって節約した結果、病院のお世話になってしまった人もたくさんおられるんでしょう。

しかし、前の方で計算したように1ヶ月間エアコンを使わずに、電気代を安くしようと考えても、1日でも入院したら、節約した電気代の1ヶ月分と同じぐらいの金額を病院に支払わねばなりません。 そのことを考えたら、エアコンを頑に使わないことは、そんなにお得な事ではないのかもしれません。

上手にエアコンを利用すれば、上記の計算よりも電気代は安く済みますし、なによりも熱中症で死んでしまったら元も子もありません。

目先のお金より、大事な命です。 エアコンも上手く使えば悪いものでもないですよ。

大きなお金は、それだけで判断を間違わせるという話

2010年7月29日

建築をやっていると、個人が把握出来る金額には限界があるような気がします。

個人差もありますが、だいたい100万円を超えたあたりから、判断がすこしずつおかしくなっていって、1千万円を超えると手に負えなくなる人が多い気がしています。ふつうに考えると、生活の中で1千万円なんてしょっちゅう扱うお金じゃないですから、ある意味どうしようもない問題だと思いますが、今回はそこいらあたりを気をつけて、ちゃんとお金の事を考えてくださいという話です。

建築にかかるお金は、普通の住宅では3千万円程度、ビルで数億円というところでしょうか。一般的に家に次ぐ高額商品と思われる車が、数百万円程度の金額(超高級車を除く)ですから、建物を購入するという事は、文字通り「桁が違う」お金を動かすことになります。

また会社で億単位のお金を動かしている人でも、いざ自分のお金を億単位で動かす時、会社のお金を動かす時と同じように冷静な決断が出来るかというと、そういう訳でもなかったような気がしています。たぶん自分のお金を動かす時は、それなりの緊張感が存在するという事なんだろうと思われます。

つまり一般的に言えば、個人的に建物を手に入れるという事は、長い人生の中でも「非日常的な金額」を動かすことになる数少ない事態だという事になると思います。ところが「非日常的な金額」というものは、ときどき人の判断を間違わせ、混乱させてしまいます。例えば、こういう問題があります。

「現在、手元にある100万円と、1年後の100万円。どちらが価値がありますか?」

もちろん答えは「現在、手元にある100万円」です。どこかの銀行に預けておけば、いまでも0.03%位の利子がついてきますので、当然1年後には100万円以上になっている事は分かりますよね。では次

「年利15%で100万円を借りて、リボルビング払いで月々1万円づつ返済した場合、完済するのに何年かかりますか?」

これもよくある問題ですが、答えは「一生かかっても完済出来ない」です。この問題のミソは毎月1万円、年間12万円を返済していけば、9年後には100万円+αを返し終わっているにもかかわらず、返済金額と利息の関係をとらえ間違うと、一生返し続けるはめになるということでしょうか。 最後に住宅ローンに関する問題をひとつ

「家を買うのに35年ローンを組んだが、がんばって働いて25年で完済しました。この場合、得をしたと考えられるべきなのでしょうか?」

こういうのもよくある話ですが、短期間でお金を返したことに対するがんばりは認められても、あまり得をしたとはいえないと思います。ちなみに1000万円を年利3%で5年間借りた場合、利息は150万円以上ついてしまいます。10年間借りたなら300万円以上です。返済期間を長く設定するということは、それだけ余分に利息を支払わなくてはならないという事は誰でも知っているはずなんですけど、いろんな事が頭をよぎって、実際の返済能力から考えられる返済期間より長い期間を設定してしまうという話です。

この問題の場合、ローンを組む時に返済計画をしっかり練っていれば、返済期間を35年ではなくて、30年〜25年に出来たかもしれません。そうすれば結構な額のお金を支払いにまわさずにすんだはずです。もちろん途中で借り替えをする事も出来たはずです。利息というのは不動産価値にはいっさい含まれないことをちゃんと理解しておくべきでしょう。

このように扱う金額が大きくなると、多くの人が正常な判断が出来なくなる上に、金融商品の複雑な仕組みによって、多くの人が混乱して、間違った判断をしてしまいがちです。ですから大きな金額を扱う時ほど慎重に決めなくてはなりません。

もちろん「即決」なんて問題外ですよということです。

住宅=負債

2010年7月27日

あなたがコツコツと貯めて守ってきた手持ちの金融資産を現金化したり、両親や親類の方に援助してもらったりしてかき集めたお金を頭金にして、金融機関から住宅ローンという名の借金をして手に入れた建物は、売買契約書にサインをしてハンコを押した瞬間から負債になります。そしてよほどの事が無い限り、ずっと負債です。

負債であっても、長い目でみて収支がプラスになるのであるのなら全然構わない訳です。例えば住宅そのものが新たな価値を生み出して、購入資金や維持管理にかかるお金を上回る金額で売却することが出来るなら全く問題はありません。ですが非常に残念なことに、この国では長年住んだ住宅の価値が上がる事はほとんどありません。住宅を手放すことになっても、購入した金額以上の値段で売れる事はほとんどないといってもいいと思います。

そして現金一括払いで住宅を購入する人を除いて、住宅ローンという借金を抱える以上、家計は基本的に赤字になります。赤字であっても、それを補うことが可能な収入があるならOKですが、リストラの嵐が吹き荒れ、ボーナスカットも当たり前のこのご時世、支払いに不安を抱かない人なんて、そんなにいないと思うのです。

住宅というのは、購入の為に専用のローンがあるくらい特別な商品ですが、そうはいってもモノであることには変わりはありませんから、価値が下がって行くのは当然です。ですが、少なくとも住宅以外のモノで、支払い期間と価値が無くなる期間が、ものすごくかけ離れているものはありません。

例えば普通自動車の減価償却期間は6年ですが、返済期間が6年を超えるような自動車ローンは無いと思います(少なくとも僕は聞いた事はありません)。ローンを設定する金融機関も当然商売でやっているので、損をするような商品を売り出す訳はありません。

では何故、価値が下がることが分かりきっている住宅という商品に対して、金融機関は30年を超えるような長期ローンを設定出来るのかというと、土地と住宅以外の担保を取っているからです。身近に住宅ローンを組んだ人がおられるなら「団体信用生命保険特約料」なんていう名目でお金を払っている事が聞けると思います。

この生命保険は、ローンを組んだ人が死亡した場合などで返済不能になったときの為の保険です。つまり、ローンを組んだ人の命を担保にとっているとも考えられます。裏を返せばそうでもしないと30年を超えるような長期ローンを販売出来る訳は無いというわけですね。

購入した商品(土地建物)のみならず、自分の命まで担保に差し出して、結果的にかなり大きな額の借金しか残らない商品の事を負債と言ってもいいと思うんですが、どうでしょうか?

Hello world!

2010年7月8日

このページのデザイナーに、「最初の記事を書いてください」と言われたので、まず最初に書こうと考えていた事を思い出しつつ編集ページを立ち上げてみたら、デフォルトのテスト投稿のタイトル「Hello world!」が目に入ったので、予定を変えて「Hello world」から書き始めようかなと思います。

小学生の頃、プログラミングを学んだときに最初に作ったのは、画面に「Hello world」と表示させるモノでした。Basicという言語でしたけど、今でもプログラミングの最初の一歩は「Hello World」という言葉を表示させるモノだと思います。「世界一有名なプログラム」と呼ばれるだけあって、今でもコンピュータ言語関係のテキストを開けば、いろいろな所でこのプログラムを目にする事が出来ます。

Appleが最初に作ったMacintoshも、初めて紹介されたときには「hello」と表示していましたが、新しい世界に一歩踏み込むとき、やっぱり「Hello!」と挨拶をするのが、世界の共通の認識なんだろうと思います。なにしろコンピューターですらそうしたのですから。

そのコンピューターの発達によって、コミュニケーションはとても安価で快適なモノになりました。子供の頃、雑誌に掲載されていた、空飛ぶ車や立体テレビ的な「科学が発達した明るい未来」は、残念ながらほとんど実現していないけれど、ことコミュニケーションツールに限っては、結構なレベルで実現されてきていると思っています。そして簡単で安価なコミュニケーションツールの発展は、人が把握しきれないほどの広大な「情報の海」を作り出しました。

検索エンジンの開発者が、増加しつづける情報量の為に、ネット全体を把握する事を諦めてしまったのは、今よりもっとネットの規模が小さく、Googleすらなかった時代でした。今でも情報量の爆発的な増加は続いていて、その広大な「情報の海」の中では、必要な情報も、不必要なノイズも、情報量としては等価であり、それらを分離するフィルタリング技術の重要度が増してきています。

新聞のようなレガシーメディアしか無かった時代、情報の「値段」と「精度」は、ある程度比例すると考えられていたと思われます。現在でもそう考えている人達は大勢いると思われますが、少なくともネットの中に限れば、情報は限りなく無料になり、情報を必要とする人のフィルタリング技術とリテラシーに精度が依存するようになってきた結果、「値段」と「精度」は比例しているとは考えられなくなっています。そして検索出来ない情報は、ノイズと同じであり、その価値はゼロに等しいということにもなりつつあります。

このブログもまた、その広大なる「情報の海」の中に放り込まれる砂粒みたいなモノになる訳です。これがノイズになるのか、有益な情報になるのかはわかりませんが、書く身としては、なるべくノイズにかき消されないような情報になることを願っています。僕の知識に偏りがあるかぎり、間違った事を書いてしまい、必ずノイズが混ざるのは避けられませんが、そこはなるべく訂正しながら書き続けていきたいと考えています。

このブログの主な目的は、

・建築にかかわる事になった人が知っていたら便利なこと

・僕自身が考えている事の整理

上の2点を主な柱として、概ね週1〜2回のペースで更新していこうと考えています。

不動産や建設業界に関わりを持たない人にとって、「建築」とは、人生において数えられるほどしか関わることがないのに、生涯所得の大半をつぎ込むことになるという、理不尽きわまりない商品でもあります。そういう機会に「建築士」という職能を思い出してもらえるようなブログになるようにと考えています。

すこし長くなりましたが、これで僕の最初の挨拶「Hello World!」という事にしたいと思います。