一時期「ライフライン」という不思議な言葉がよく使われましたが、” Infrastructure “ 略してインフラのお話。
インフラとは国家や社会などの経済的存続に必要な基本施設のことを言います。ここ日本では、電気、ガス、水道のだったり、寒冷地では冬の灯油の供給は死活問題だったりしますので、そういうのも広義のインフラといっても問題ないと思います。そしていまではネットへの接続もインフラだと考えられます。
2009年、Paul. M. Romer(ポール・ローマー)というアメリカの経済学者がTEDで Charter Ctiesというアイデアについてスピーチしています。このスピーチの最初にアフリカの空港の灯りの下で勉強する学生達の写真が映し出されます。かれらは家庭用の電気がないので、夜は空港のあかりの下で勉強します。でも彼らは携帯電話は持っていてインターネットにも接続できます。携帯電話のようなここ20年で発達したテクノロジーを所持しているのに、100年以上前から存在する家庭用電気というテクノロジーが所持できないのは何故なんだろうか?という問いから始まります。
詳しくは動画を観てもらうとして、乱暴なまとめ方をすると、貧困から抜け出す為には香港やシンガポールのような周辺の都市とルールが違う特区都市(=チャーターシティ)という考え方を適用できないかという話なんですけど、なぜ5年も前の動画のことを書いているかといえば、ここ最近、インターネットがあまり繋がらない環境に一週間ほどいたからです。(接続速度はISDN以下でした。)
大都市でも建物の中やトンネル、地下鉄などで携帯電話の電波が届かないことがあるわけですが、それがずっと続く環境というのは不便なことこの上ないわけです。調べものをしようにも、今のwebページはFlashだの広告だのがたくさん埋め込まれているので、ページを開くだけでものすごい時間がかかるわけです。だからなにか調べようとしても調べられない。買い物も出来ない。その上、地理的に山の中なので物資も手に入りにくい。(その地域の人は行商で暮らしてるそうです)。住んでいる人はCATVのラインを利用した放送やインターネット網で暮らしているわけですが、通過するだけの余所者は、そのインフラにはなかなか入れないわけでして…(まぁ公衆WiFIがない訳ではないのですが、その場で契約できるわけではないですから)結局僕は一度家に戻った時に通信環境を購入して、もう一度もどることになりました。
ローマーがアフリカの某国の電力について語るところによると、既得権益者、つまりすでに電気を持っている裕福な人達や企業が助成金付きの安い電力を求めるので、結果的に電力会社は儲からない。儲からないから電力網を構築する余裕がない。だから新規参入組(つまり貧乏から脱却しようとする人達です)が電気を使おうと思ったら、開通工事代を丸まる支払わないとダメということになる。そんな高いお金は払えないので、貧しい人達はいつまでたっても電気が利用できない。だから貧しい子供たちはいつまでも空港の灯りの下で勉強することになるわけです。携帯電話は持っているのに……
じゃあなんで携帯電話は所持できるんだろうかというと、電力とは違うルールが適用されているからです。日本でも一時期、softbankが街中でADSLルーターをただ同然で配ってましたが、あのやり方の是非はともかくとして、結果として日本のネットへの接続料は劇的に安くなりました。それまでは電話会社のルールでしかインターネットに接続できなかったのが、softbankがADSLを引っさげて参入してきたことで、ルールが変わったのです。同じことをナイロビの携帯会社はやっているわけです。電力会社とは違うルールで勝負してるわけですね。
つまり何かを変えようと思ったら「違うルールで勝負する」ということが重要なわけです。
「まちおこし」とか「復興」とか、なんでそんなことをしなくちゃならないかというと、自分達のテリトリーから人が流出していくからです。つまり「まちおこし」というのは、その逆でソトから人を流入させようということですよね。「ナカのルール」がマズいから人が流出していくのに、それを変えないでソトから人がやってくるわけはないわけで……
そしてソトの人は「ソトのルール」を持っています。ソトの人の持っている「ソトのルール」と、訪れた地域の「ナカのルール」を比べてみて、「ナカのルール」に従った方が快適な生活がおくれるということになれば、ナカの人になってくれるわけです。
例えていうなら、常連さんが大きな顔をしてる呑み屋に入った時のアウェーな感じを楽しめる人なんて、あんまりいないんですよ。人間は趣味でもない限りあえて「不便な環境」には行きたがらないですから、ソトから人に来てもらいたかったら、滞在している間、気持ちよくなってもらうしかないんですよね。
地域の人だって携帯電話は持ってるので、僕も滞在している間、テザリングなどでネット環境を構築できる可能性はあったのに、その地域に通信会社の営業所が存在していないから手続きが出来ない。有線のCATVも一ヶ月とかの比較的短い滞在の為には加入料が高すぎる。その結果、僕はその地域の通信網には参入できなかったわけです。もしもその地域の行政が通信環境を部外者にも与えてくれていたなら、僕はあんなに不便な一週間を過ごす必要はなかったわけです。
(多分長くなるのでこの話の続きはちょこちょこ書いていくことになるんじゃないのかな……)